結婚相談所の門戸結婚相談所の門戸を叩くのは、どんな人たちが多いのか。 年齢的には、アラサーから始まり、40代、50代が圧倒的に多いのだが、男女別に見てみると、おおまかにこんなタイプに分類される。
女性は、主に2タイプ。
20代の頃は華やかな恋愛をし、年を重ねてしまった。「まだまだ大丈夫!」と思っていたものの、気づいたら周りには結婚できる男性がいなくなっていて、あわてて結婚相手を見つけたくて入会を決める。このタイプは、かつて婚活アプリに登録した経験があったり、同時進行でアプリを利用していたり、誘われれば合コンにも積極的に参加している。
もう1つは、これまで恋愛らしい恋愛をせずに年を重ねてしまい、結婚をしたいが出会い方がわからない。恋愛のしかたもわからない。ならば、あれこれと世話をやいてくれる仲人のいる相談所に入ってみようと思うタイプ。
男性登録者はどんなタイプが多いのか
一方、男性はどうか。
数多くの恋愛をしてきたタイプは、まず結婚相談所には入らない。出会いの場さえ提供してもらえば、いくらでも女性を獲得する術を知っているからだ。彼らは合コンの常連参加者だったり、手軽な婚活アプリを利用したりする傾向にある。このタイプは、結婚も頭の片隅にあるのだけれど、恋愛をするのが楽しいので(また自分がいつまでもモテると思っているので)、なかなか結婚の決断を下さない。
恋愛経験が豊富なのに相談所に来るのは、すぐにでも結婚を決めたいと思っている、ある程度の収入がある男性たちだ。この層は女性たちにとって魅力的だが、彼らは女性を選ぶ基準も理想も高く、できるだけ自分よりも若い女性を選ぼうとする傾向にある。対して女性は、なるべく年齢の近いこの層の男性を好むのでマッチングがうまくいかない。
もう1つの男性登録者のタイプは、恋愛経験をあまりしないままに年を重ね、どうやって出会ったらいいのか、出会ってからどう交際を進めていったらいいのかわからない人たち。実はこのタイプの男性が、結婚相談所にはいちばん多い。
結婚をしたいのなら、女性たちはこの層を狙うのがいちばんの近道なのだが、どうもこの層の男性には魅力を感じないようだ。なにぶん恋愛経験のない彼らは、お見合いの後に交際に入っても積極的に動けなかったり、逆に動くと押し引きがわからずに猪突猛進してしまったりして、女性の気持ちをつかめずにお断りをされてしまうことが多い。 お見合いは通るのに、交際が続かない
藤田昂(38歳、仮名)は、恋愛経験もなく年を重ねてしまったタイプ。そして、まじめな性格ゆえに交際に入ると猪突猛進してしまう傾向にあった。 「
いったい僕のどこが悪いのでしょうか。どうして断られてしまうんですかね。なんだかお見合いするのも、お付き合いに入るのもだんだん怖くなってきました」
入会してから3カ月、2つの交際が立て続けにダメになった昂は、暗い顔でこう言った。声色からも落ち込んでいるのがありありとわかった。
昂は、身長が174センチあり、はやりの細身のスーツが似合う、さっぱりとした顔立ちのハンサムだ。大手メーカーに勤めていて、年収も悪くない。登録したら20件近い申し込みがあり、その中から8人とお見合いをした。
お見合いの通過率もよく、女性からお断りをされたのは1人で、残りの7人からは交際希望がきた。その7人のうち、5人を昂がお断りして、2人と交際に入った。
ここまでの事実を切り取るなら、ずいぶんなモテ男のように思えるのだが、昂の問題は交際に入ってからにあった。2人のうち、1人は4回目のデートの後、女性から“交際終了”がきた。もう1人は、3回目のデートの後、“交際終了”がきたのだ。
お見合いには“食事3回目の壁”があり、3回食事ができるとその後も、トントンと進めるという不文律がある。昂は3回の壁をなんとか越えたのに、4回目のデートでお断りだったので、ショックもさらに大きかったのだろう。そして、立て続けにもう1人からは3回目の食事の後にNGを出された。
それが、冒頭の昂の発言につながった。
「いったい僕のどこが悪いのでしょうか……」
モテる男性とは、いったいどういう人たちなのか。「女って、しょせん男を顔と収入で選びますよね」という人がいるが、それはとっかかりであって、最終的にモテる男性というのは、話が面白かったり、一緒にいて居心地がよかったり、女性の扱いに手慣れていたりする人たちだ。そういう男性は、ある程度恋愛の数をこなしてきているので、どうしたら目の前の女性が自分を受け入れてくれるのかを感覚的に知っている。
昂には、それが欠けていた。学生時代、男女のグループで遊ぶことはあっても、女性と1対1で付き合ったことが1度もなかったという。会社に入ってからも、恋愛経験がないままに30を越えた。そして、33歳のとき、合コンで知り合った37歳の女性から連絡先を聞かれ、付き合うことになった。それが初めての恋愛だった。
「メールもデートの誘いも彼女からバンバンきたんです。それに乗っかっていればよかったから楽だったし、3回目のデートで彼女の家に誘われて、男女の関係にもなりました」 ところが、3カ月経った頃から、彼女からの連絡が遠のいていった。
「1度メールを入れたら、“今すごく仕事が忙しい”と返信がきて。それからは仕事の邪魔をしたくなかったし、メールを入れるタイミングもわからなかったしで、1カ月が経ってしまった。僕はずっと会いたかったので、思い切ってメールを入れたら、“もう別れましょう”と返信がきました」 毎日のメールを甘く見てはいけない 入会面談のとき、この初恋話を聞いていたので、私は昂に言った。 「結婚をしたいなら、積極的に動こうね。お見合いをして交際に入ったら、毎日のメールは大事よ。LINEはやってる? LINEは婚活に必須アイテムよ。LINEならスタンプも使えるしね。そして、1週間に1回は最低でも会うように心掛けましょう」 「はい、LINEはやっています。毎日LINEを入れるんですか? 相手はうるさく思わないですか?」
昂と同じ質問を、ほかの会員からもされることが多い。もちろん毎日メールやLINEをしたからといって必ずしも交際が成功するわけではないのだが、これまで仲人をしてきた経験則から言えば、交際に入って毎日メールのやりとりをしていたカップルは、成婚をしていく。会うための連絡ツールとして、1週間に1、2度しかメールをしないカップルは、そのうち連絡を取らなくなって交際が終了となる。
お見合いには、 “交際”と“真剣交際”の区分があり、交際というのは、その相手がどんな人柄なのかを食事やデートをしながら探る期間だ。“交際”は何人としていてもよいし、ほかの相手とお見合いをしてもよいことになっている。“真剣交際”は、1人に絞って結婚へと向かっていく交際のことだ。 複数の相手と“交際”している場合、メールをたまにしか入れない男性は、毎日マメに入れてくる男性に負ける。女性側も、きたメールのレスを翌日や翌々日にしている女性は、その日のうちにメールを返している女性に負ける。
私は昂に言った。
「それに“毎日メールを入れる”と決めていれば、どんなに仕事が忙しくても、どこかで時間を見つけて1通のメールを入れるでしょう? ところが、そう自分に課していないと仕事が忙しいのを優先させて、“メールは明日でもいいや”と思ってしまう。で、忙しいとまた“次の日でいいや”となる。そうこうしているうちに1週間、2週間と経って、今度はメールが入れづらくなってしまうし、気持ちのテンションも下がっていくの」 毎日のメールを甘くみてはいけないのだ。
昂は、2人の女性から立て続けに交際を断られショックを受けたのだが、1人は初めてお見合いをした女性だった
「小柄でやせていて、見た目がタイプ。話してみたらすごく楽しい人で、お見合いしていた1時間があっという間に過ぎました」
ひと目ぼれだった。お見合い相手の成田美智恵(34歳、仮名)からも「交際希望」がきて、2人は交際に入った。恋愛に不慣れな彼だったが、毎日LINEを入れたりデートに誘ったりしていく中で、気持ちがますます盛り上がってしまったようだ。 2度目のデートを終えた後に、昂からこんなメールがきた。
「ヤバイくらい好きになってしまいました」 私は昂が美智恵に一途になりすぎているのが、少し不安だった。思う気持ちが強くなりすぎると、自由に身動きが取れなくなる。自分らしさが出せなくなる。いらない妄想がわいたり、嫉妬心が強くなったりする。
「昂さん、1人の女性を好きになったときほど、執着を分散させたほうがいいのよ。あと4つお見合いが残っているでしょう? その中で気に入った人がいたら、交際希望を出して、その女性とも食事をしたりデートをしたりしましょう。ほかの女性と交際することで、気持ちもクールダウンできるし、より冷静に美智恵さんを見ることができるから」 こうして4つのお見合いをした昂は、その中の1人、2つ年上の古田陽子(40歳、仮名)とも交際することになった。 愛情のギブアンドテイクを求めてはいけない
陽子と交際をしつつも、昂は美智枝に夢中だった。しかし、3回目のデートを終えたところで、美智枝との関係の雲行きが怪しくなった。 「美智恵さんから“交際終了”がくるかもしれません。毎日あった返信が一昨日からないんです」 ある夜そんなメールがきたので、昂と電話で話をした。 「何があったの?」 「毎週末会っていたんですが、先週末は会えなかった。美智恵さんが、仲のいい友達4人と温泉旅行に行くからって。疑っちゃいけないと思ったんですけど、友達って女なのかな。中に男もいるんじゃないかって。で、その温泉に行った夜、LINEの返信がなかったんですよ。心配で不安で眠れなかった。そしたら翌朝、“夕べは、久しぶりに女4人で話が盛り上がって、お酒も飲んで、寝てしまいました”ってLINEがきたんですね。そのLINEに、“僕は、返信がこなかったから心配で眠れませんでした。1晩放置されるのはつらいです”って、メールしてしまったんです」 美智恵にしてみたらまだ3回しか会ったことのない相手に、たった1晩返信しなかったからといって、「心配で眠れなかった」と言われたのは、重たかったに違いない。
「あのね、メールは毎日入れたほうがいいんだけど、相手には返信を強要しないこと。お見合いで出会って2回目、3回目のデートをしているときって、信頼関係を築いている真っ最中。そんなときに、お相手に“ああしてほしい”“こうしてほしい”とリクエストしたら、いい結果は生まない。優しさや気持ちを与えたからといって、同じ量の優しさと気持ちを返してもらおうとすると恋愛はうまくいかなくなるよ」
「はい」
私の言葉に、昂は力なく答えた。
そして、なんとか4回目のデートにこぎつけただが、デートの間中ギクシャクした空気はぬぐえず、翌日、美智恵の相談室から“交際終了”がきた。 恋愛初心者は、場数を踏むことが大事 昂の落ち込みようはなかったが、救いは陽子とも交際していたことだ。交際していたのが美智恵だけだったら週末がぽっかりと空いてしまうが、日曜日には陽子と2回目の食事に行く約束をしているという。
「美智恵さんはすごくおとなしい人でこちらがグイグイ引っ張っていかないといけなかったけれど、陽子さんはすごく積極的な女性だから、何かとラクなんです。初めてのデートを終えたときも、帰り際に“次はいつお会いできますか?”と、彼女から聞いてくれたんですよ」
ところが3回目のデートを終えた後に、昂からこんな電話がかかってきた。
「デートに行く電車の中で、“ああ、なんか会うのがおっくうだな”と思ってしまったんです。積極的なのはいいんですけど、会うたびに、いろんなことを言われる。たとえば、『メールは夜の10時までに欲しい』とか、『持っているバッグが、今日の服には合わない』とか。最初は、はっきり言ってもらったほうがいいと思っていたけど、なんだかあれこれリクエストされるのって気持ちのいいものじゃない。僕が美智恵さんに“なんで返信してくれなかったのか。1晩放置されるのはつらい”といったのが、どのくらい彼女にとって嫌だったのか、身をもってわかりました」
3回目のデートで乗り気ではない態度が陽子に伝わったのだろうか。その翌日に陽子の相談室からお断りが入った。 これまで恋愛経験のなかった男性がいきなり婚活の舞台に上がると、誰もが昂のような苦い経験をする。しかし、失敗から学ぶことも大きく、そこからどうすれば相手の気持ちがつかめるようになるか、少しずつわかってくるようになる。恋愛初心者は、傷つくことを恐れずに場数を踏んでいく。これにつきる。
そして、結婚をしたいのなら、止まらずに会い続けることだ。これは婚活に限ったことではなく、行動力こそがすべて成功への道を切り開いていくのだから……。を叩くのは、どんな人たちが多いのか。 年齢的には、アラサーから始まり、40代、50代が圧倒的に多いのだが、男女別に見てみると、おおまかにこんなタイプに分類される。 女性は、主に2タイプ。 20代の頃は華やかな恋愛をし、年を重ねてしまった。「まだまだ大丈夫!」と思っていたものの、気づいたら周りには結婚できる男性がいなくなっていて、あわてて結婚相手を見つけたくて入会を決める。このタイプは、かつて婚活アプリに登録した経験があったり、同時進行でアプリを利用していたり、誘われれば合コンにも積極的に参加している。 もう1つは、これまで恋愛らしい恋愛をせずに年を重ねてしまい、結婚をしたいが出会い方がわからない。恋愛のしかたもわからない。ならば、あれこれと世話をやいてくれる仲人のいる相談所に入ってみようと思うタイプ。 男性登録者はどんなタイプが多いのか 一方、男性はどうか。
数多くの恋愛をしてきたタイプは、まず結婚相談所には入らない。出会いの場さえ提供してもらえば、いくらでも女性を獲得する術を知っているからだ。彼らは合コンの常連参加者だったり、手軽な婚活アプリを利用したりする傾向にある。このタイプは、結婚も頭の片隅にあるのだけれど、恋愛をするのが楽しいので(また自分がいつまでもモテると思っているので)、なかなか結婚の決断を下さない。
恋愛経験が豊富なのに相談所に来るのは、すぐにでも結婚を決めたいと思っている、ある程度の収入がある男性たちだ。この層は女性たちにとって魅力的だが、彼らは女性を選ぶ基準も理想も高く、できるだけ自分よりも若い女性を選ぼうとする傾向にある。対して女性は、なるべく年齢の近いこの層の男性を好むのでマッチングがうまくいかない。
もう1つの男性登録者のタイプは、恋愛経験をあまりしないままに年を重ね、どうやって出会ったらいいのか、出会ってからどう交際を進めていったらいいのかわからない人たち。実はこのタイプの男性が、結婚相談所にはいちばん多い。
結婚をしたいのなら、女性たちはこの層を狙うのがいちばんの近道なのだが、どうもこの層の男性には魅力を感じないようだ。なにぶん恋愛経験のない彼らは、お見合いの後に交際に入っても積極的に動けなかったり、逆に動くと押し引きがわからずに猪突猛進してしまったりして、女性の気持ちをつかめずにお断りをされてしまうことが多い。 お見合いは通るのに、交際が続かない
藤田昂(38歳、仮名)は、恋愛経験もなく年を重ねてしまったタイプ。そして、まじめな性格ゆえに交際に入ると猪突猛進してしまう傾向にあった。 「いったい僕のどこが悪いのでしょうか。どうして断られてしまうんですかね。なんだかお見合いするのも、お付き合いに入るのもだんだん怖くなってきました」 入会してから3カ月、2つの交際が立て続けにダメになった昂は、暗い顔でこう言った。声色からも落ち込んでいるのがありありとわかった。
昂は、身長が174センチあり、はやりの細身のスーツが似合う、さっぱりとした顔立ちのハンサムだ。大手メーカーに勤めていて、年収も悪くない。登録したら20件近い申し込みがあり、その中から8人とお見合いをした。
お見合いの通過率もよく、女性からお断りをされたのは1人で、残りの7人からは交際希望がきた。その7人のうち、5人を昂がお断りして、2人と交際に入った。 ここまでの事実を切り取るなら、ずいぶんなモテ男のように思えるのだが、昂の問題は交際に入ってからにあった。2人のうち、1人は4回目のデートの後、女性から“交際終了”がきた。もう1人は、3回目のデートの後、“交際終了”がきたのだ。 お見合いには“食事3回目の壁”があり、3回食事ができるとその後も、トントンと進めるという不文律がある。昂は3回の壁をなんとか越えたのに、4回目のデートでお断りだったので、ショックもさらに大きかったのだろう。そして、立て続けにもう1人からは3回目の食事の後にNGを出された。 それが、冒頭の昂の発言につながった。 「いったい僕のどこが悪いのでしょうか……」 モテる男性とは、いったいどういう人たちなのか。「女って、しょせん男を顔と収入で選びますよね」という人がいるが、それはとっかかりであって、最終的にモテる男性というのは、話が面白かったり、一緒にいて居心地がよかったり、女性の扱いに手慣れていたりする人たちだ。そういう男性は、ある程度恋愛の数をこなしてきているので、どうしたら目の前の女性が自分を受け入れてくれるのかを感覚的に知っている。 昂には、それが欠けていた。学生時代、男女のグループで遊ぶことはあっても、女性と1対1で付き合ったことが1度もなかったという。会社に入ってからも、恋愛経験がないままに30を越えた。そして、33歳のとき、合コンで知り合った37歳の女性から連絡先を聞かれ、付き合うことになった。それが初めての恋愛だった。 「メールもデートの誘いも彼女からバンバンきたんです。それに乗っかっていればよかったから楽だったし、3回目のデートで彼女の家に誘われて、男女の関係にもなりました」 ところが、3カ月経った頃から、彼女からの連絡が遠のいていった。 「1度メールを入れたら、“今すごく仕事が忙しい”と返信がきて。それからは仕事の邪魔をしたくなかったし、メールを入れるタイミングもわからなかったしで、1カ月が経ってしまった。僕はずっと会いたかったので、思い切ってメールを入れたら、“もう別れましょう”と返信がきました」 毎日のメールを甘く見てはいけない 入会面談のとき、この初恋話を聞いていたので、私は昂に言った。
「結婚をしたいなら、積極的に動こうね。お見合いをして交際に入ったら、毎日のメールは大事よ。LINEはやってる? LINEは婚活に必須アイテムよ。LINEならスタンプも使えるしね。そして、1週間に1回は最低でも会うように心掛けましょう」 「はい、LINEはやっています。毎日LINEを入れるんですか? 相手はうるさく思わないですか?」 昂と同じ質問を、ほかの会員からもされることが多い。もちろん毎日メールやLINEをしたからといって必ずしも交際が成功するわけではないのだが、これまで仲人をしてきた経験則から言えば、交際に入って毎日メールのやりとりをしていたカップルは、成婚をしていく。会うための連絡ツールとして、1週間に1、2度しかメールをしないカップルは、そのうち連絡を取らなくなって交際が終了となる。 お見合いには、 “交際”と“真剣交際”の区分があり、交際というのは、その相手がどんな人柄なのかを食事やデートをしながら探る期間だ。“交際”は何人としていてもよいし、ほかの相手とお見合いをしてもよいことになっている。“真剣交際”は、1人に絞って結婚へと向かっていく交際のことだ。
複数の相手と“交際”している場合、メールをたまにしか入れない男性は、毎日マメに入れてくる男性に負ける。女性側も、きたメールのレスを翌日や翌々日にしている女性は、その日のうちにメールを返している女性に負ける。
私は昂に言った。
「それに“毎日メールを入れる”と決めていれば、どんなに仕事が忙しくても、どこかで時間を見つけて1通のメールを入れるでしょう? ところが、そう自分に課していないと仕事が忙しいのを優先させて、“メールは明日でもいいや”と思ってしまう。で、忙しいとまた“次の日でいいや”となる。そうこうしているうちに1週間、2週間と経って、今度はメールが入れづらくなってしまうし、気持ちのテンションも下がっていくの」 毎日のメールを甘くみてはいけないのだ。 昂は、2人の女性から立て続けに交際を断られショックを受けたのだが、1人は初めてお見合いをした女性だった 「小柄でやせていて、見た目がタイプ。話してみたらすごく楽しい人で、お見合いしていた1時間があっという間に過ぎました」 ひと目ぼれだった。お見合い相手の成田美智恵(34歳、仮名)からも「交際希望」がきて、2人は交際に入った。恋愛に不慣れな彼だったが、毎日LINEを入れたりデートに誘ったりしていく中で、気持ちがますます盛り上がってしまったようだ。
2度目のデートを終えた後に、昂からこんなメールがきた。
「ヤバイくらい好きになってしまいました」
私は昂が美智恵に一途になりすぎているのが、少し不安だった。思う気持ちが強くなりすぎると、自由に身動きが取れなくなる。自分らしさが出せなくなる。いらない妄想がわいたり、嫉妬心が強くなったりする。 「昂さん、1人の女性を好きになったときほど、執着を分散させたほうがいいのよ。あと4つお見合いが残っているでしょう? その中で気に入った人がいたら、交際希望を出して、その女性とも食事をしたりデートをしたりしましょう。ほかの女性と交際することで、気持ちもクールダウンできるし、より冷静に美智恵さんを見ることができるから」
こうして4つのお見合いをした昂は、その中の1人、2つ年上の古田陽子(40歳、仮名)とも交際することになった。 愛情のギブアンドテイクを求めてはいけない 陽子と交際をしつつも、昂は美智枝に夢中だった。しかし、3回目のデートを終えたところで、美智枝との関係の雲行きが怪しくなった。
「美智恵さんから“交際終了”がくるかもしれません。毎日あった返信が一昨日からないんです」
ある夜そんなメールがきたので、昂と電話で話をした。
「何があったの?」
「毎週末会っていたんですが、先週末は会えなかった。美智恵さんが、仲のいい友達4人と温泉旅行に行くからって。疑っちゃいけないと思ったんですけど、友達って女なのかな。中に男もいるんじゃないかって。で、その温泉に行った夜、LINEの返信がなかったんですよ。心配で不安で眠れなかった。そしたら翌朝、“夕べは、久しぶりに女4人で話が盛り上がって、お酒も飲んで、寝てしまいました”ってLINEがきたんですね。そのLINEに、“僕は、返信がこなかったから心配で眠れませんでした。1晩放置されるのはつらいです”って、メールしてしまったんです」 美智恵にしてみたらまだ3回しか会ったことのない相手に、たった1晩返信しなかったからといって、「心配で眠れなかった」と言われたのは、重たかったに違いない。 「あのね、メールは毎日入れたほうがいいんだけど、相手には返信を強要しないこと。お見合いで出会って2回目、3回目のデートをしているときって、信頼関係を築いている真っ最中。そんなときに、お相手に“ああしてほしい”“こうしてほしい”とリクエストしたら、いい結果は生まない。優しさや気持ちを与えたからといって、同じ量の優しさと気持ちを返してもらおうとすると恋愛はうまくいかなくなるよ」
「はい」 私の言葉に、昂は力なく答えた。
そして、なんとか4回目のデートにこぎつけただが、デートの間中ギクシャクした空気はぬぐえず、翌日、美智恵の相談室から“交際終了”がきた。 恋愛初心者は、場数を踏むことが大事 昂の落ち込みようはなかったが、救いは陽子とも交際していたことだ。交際していたのが美智恵だけだったら週末がぽっかりと空いてしまうが、日曜日には陽子と2回目の食事に行く約束をしているという。
「美智恵さんはすごくおとなしい人でこちらがグイグイ引っ張っていかないといけなかったけれど、陽子さんはすごく積極的な女性だから、何かとラクなんです。初めてのデートを終えたときも、帰り際に“次はいつお会いできますか?”と、彼女から聞いてくれたんですよ」
ところが3回目のデートを終えた後に、昂からこんな電話がかかってきた。
「デートに行く電車の中で、“ああ、なんか会うのがおっくうだな”と思ってしまったんです。積極的なのはいいんですけど、会うたびに、いろんなことを言われる。たとえば、『メールは夜の10時までに欲しい』とか、『持っているバッグが、今日の服には合わない』とか。最初は、はっきり言ってもらったほうがいいと思っていたけど、なんだかあれこれリクエストされるのって気持ちのいいものじゃない。僕が美智恵さんに“なんで返信してくれなかったのか。1晩放置されるのはつらい”といったのが、どのくらい彼女にとって嫌だったのか、身をもってわかりました」 3回目のデートで乗り気ではない態度が陽子に伝わったのだろうか。その翌日に陽子の相談室からお断りが入った。 これまで恋愛経験のなかった男性がいきなり婚活の舞台に上がると、誰もが昂のような苦い経験をする。しかし、失敗から学ぶことも大きく、そこからどうすれば相手の気持ちがつかめるようになるか、少しずつわかってくるようになる。恋愛初心者は、傷つくことを恐れずに場数を踏んでいく。これにつきる。 そして、結婚をしたいのなら、止まらずに会い続けることだ。これは婚活に限ったことではなく、行動力こそがすべて成功への道を切り開いていくのだから……。